“和食を薬膳で説く”‐きゅうりとワカメの酢の物‐
2021.07.15
“和食を薬膳で説く”
“薬膳は漢方生薬を用いた特別なお料理”
そんな風に思っている人が多いようです。
でも、実は食べ物の組み合わせ…“食べ方”が重要。
毎日食卓に並ぶ食材でも、薬膳料理は出来てしまうのです。
“和食を薬膳で説く”シリーズでは、ごく一般的な何気ない家庭料理に生きている薬膳の知恵をお伝えしていきたいと思います。
第一回目に取り上げるのは「きゅうりとワカメの酢の物」です。
夏野菜の代表・きゅうりはこれからの季節、大活躍しますね。
薄く小口切りしたきゅうりを軽く塩で揉んで水切りし、ワカメと和えて甘酢で整えれば、爽やかな副菜の出来上がりです。
*作り方はこちら♪
このお料理、“薬膳料理”にするには、もうひと工夫が必要です。
みなさんのご家庭では、ここに何を加えますか?
しらす?
緑に白が生えてきれいですね。
ゴマ?
香りが引き立ちますね。
モズク?
オクラ?
トロトロした触感で喉越しが良くなります。
しかし、“薬膳料理”にはもう一歩。
他にありませんか?
生姜のすりおろし。
実はこれが正解なのです。
これを深く理解するには薬膳理論の食べ物の味と性質を知る必要があるのですが、しかし難しいことはこの際置いておきましょう。
基本的に夏野菜…特に瓜類は、食べたときに身体の熱を冷ますように作用します。
こういう働きを持つものを、「陰性」の食材と言います。
きゅうりももちろんその仲間のひとつ。
またワカメなどの海藻類も同様の作用を持っています。
きゅうりとワカメは、冷やす×冷やす作用の食材の組み合わせなのです。
なぜ暑い夏に好んで食べられるか、理由が分かりますね。
私たち人間は自然界の一部といわれていますので、暑い季節は人間の身体も熱をもっていて、冷やすものを求めているのです。
しかし、冷やし過ぎるのも問題。
そこで、生姜の出番です。
生姜はきゅうりやワカメとは反対に、身体を温める作用を持った「陽性」の食材なのです。
身体を冷やし過ぎないよう、生姜のすりおろし(もしくは細切り)をほんの少量添える…これで陰陽のバランスが取れた立派な“薬膳料理”になります。
簡単でしょう?
ちなみに、モズク酢に生姜、海藻由来のところてんに辛子を添えるのも、これと同じ意味があります。
“生姜を添えたきゅうりとワカメの酢の物”
みなさんの食卓にもぜひ取り入れてみてくださいね。